頑張ること 踏ん張ること

私の母が、末期癌で亡くなる少し前、

母を姉と慕う、妹のような方が、

母に声を掛けました。

「頑張れ!」と。

その方は、心から、応援するつもりで、おっしゃいました。

でもその時、母は絞り出すような声でこう言ったのです。

「もう十分、頑張ってるから、言わないで」と。

私は、常日頃から母に、「踏ん張れ!」と声を掛けてきました。

そうすると、緊急搬送され、大手術をして、

奇跡的に命を取り留めたばかりの母が、

踏ん張って、自らの意思で、必死にリハビリに、取り組むのです。

「頑張れ!」と「踏ん張れ!」、大して違いがないように、聞こえるかもしれません。

当事者には、わかるのです。

その大きな違いが。

その後、母は何とか歩けるくらいにまで快復し、

生きたかった地、全てを私を伴い旅行し、

自分の新婚旅行先の上高地帝国ホテルでは、

従業員の方々のお見送りを受け、

こころから満足して、旅立っていきました。

私も、自分に対し「頑張れ!」とは、決して言ってほしくありません。

もう、十分、頑張って生きているから。

でも、「踏ん張れ!」だったら、

「あと一息、踏ん張ってみよう!」と思えます。

それは、身体の病気の方のみならず、

ひきこもりの方にも、うつ病や、

普通の、様々な、こころの辛さを 抱えておられる方々にも、

生きている全ての方々に、当てはまることだと思うのです。

皆、それぞれ、無意識に、命懸けで生きている。

それが、人です